INTERVIEW 投資先支援

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2022.11.02
株式会社インテグリカルチャー
代表取締役 羽生 雄毅

第6回 投資先インタビュー (株式会社インテグリカルチャー)~みんなが使える細胞農業をつくる~

<会社概要>
会社名        :株式会社インテグリカルチャー
所在地        :東京都文京区本郷4-1-3
代表取締役  :羽生 雄毅
事業概要     :汎用大規模栽培培養システム“CulNet System™”を用いた有用成分、化粧品、食品、細胞培養肉の研究開発

Q.貴社の商品・サービスについて教えてください。

A.2015年に創業。広島大学出身の川島一公CTOなどが汎用大規模細胞培養システム「CulNet System™(カルネット システム)」を開発し、培養肉・食品・化粧品原材料等の研究開発を行っています。簡単に言うと、培養肉を作るための装置と培養肉をどのように作るかの研究・開発です。カルネット システムを通じて、汎用性が高くかつ低コストな細胞培養プラットフォーム技術の提供を目指しています。その中で、まず我々が「カルネット システム」を使用し培養肉が作れることを示すために、モデルの一つとしてフォアグラを作っています。

                                 (川島CTO)

Q.カルネット システムとは。

A.体の中の臓器の仕組みを装置に置き換えたもので、体内で行われているメカニズムを外部で再現しています。実際に、肉を育てるために必要な臓器はそんなに多くないことが我々の研究で分かったのです。必要な臓器の種類、細胞を装置に入れて、成長因子を自ら作り最適化した形で培養していく方法となっています。

                                   (カルネット システム)

Q.カルネット システムの強み。

A.一つめは法的メリットです。成長因子を外から入れると食品添加物となり、新しく認可が必要となる。一方で我々は、装置の中で反応してできているので外から添加するものじゃないという判断ができる。そのため、社会実装までの時間をかなり短縮できます。第2にコスト。成長因子をいかに安く生産するかが肝になっている中、当社技術は高額な成長因子を外から入れていないので相当コストダウンが図れます。最後は確証性です。将来的にカルネットが作ることのできる肉の種類は、今海外で取り組まれているものとは比較にならないくらい確証性があります。

Q.培養フォアグラの開発状況。

A.現在、培養フォアグラの開発をしており、1か月8キロ程度の培養フォアグラが製造できます。次の段階では320キロまでスケールアップしていくことを目指しています。フォアグラは、動物虐待の見地により人・社会・地域・環境に配慮したエシカル消費を選ばれる方々や生産や販売が禁止されている地域での需要を期待しています。細胞培養の点で、血の成分の大半を作る肝臓は非常に重要な臓器と位置付けており、肝臓を標的とすることが「カルネット システム」の将来的な普及に重要な根幹技術となると考えています。

                                                                  (培養フォアグラ)

Q.培養肉以外の分野について。

A.培養肉を作る過程で出るエキス成分にも有用性(アンチエイジングの機能)があることがわかり、コスメ製品の原材料として実際に販売しています。既に3企業さまに採用されたほか、美容クリニック専売製品を自社で生産し販売しています。また、複数社から依頼もあり今後はOEMでの展開も検討していきたい。素材や香料なども十分可能性があると考えます。

                                                      (化粧品原料:CELLAMENT)

Q.今後の展望を教えてください。

A.消費者への認知が一番難しく、培養肉を作るうえで何をしたか、何を入れてどういうプロセスで培養したかをきちんと情報公開したいと考えております。良く分からないものを組み合わせて作ったものは誰しも食べたくないと思います。まずは適切に消費者とのコミュニケーションを取り、培養肉に関する周知活動を行いたいですね。

Q.広島県でやりたいことは。

A.一次生産者の方のビジネスの選択肢の一つとして、一緒に細胞培養に挑戦したい一次生産者の方とつながりたいです。例えば普通に肉牛を作りながら、片側でチーズ工場みたいな感覚で培養肉を作るみたいなイメージです。そうすることで、肉牛の飼育頭数も減らして管理コストも削減できるかと思うので、ハイブリッド版の畜産が生まれていくのではないかなと考えています。広島は畜産、水産、工業、さまざまなサプライチェーンに加え、都市機能も充実。細胞農業のエコシステムモデルを構築するには最適な都市だと思っています。広島から複数の細胞農業に関するプロジェクトが立ち上がれば面白いですね。目標はお好み焼屋さんに培養肉を使ってもらうこと。熊野の筆などの動物性繊維や、牡蠣の培養も挑戦したい領域です。将来は培養領域のAppleになれたらいいなと社内で話しています。ITベンチャーが成功できているのは、コンピューター技術が一般化し、ハードウェアプラットフォームができたからだと考えています。我々も培養肉領域でハードウェアプラットフォームを構築し、世界中の人がカルネット システムを使ってそれぞれの分野で新しいビジネスに挑戦をしてほしいと考えています。

Q.貴社にとって、VCとは?

A.リスクの有無を軸として出資可否を決める従来の金融機関と違って、可能性の有無を軸で考えるVCは、同じ金融系でも従来と真逆のマインドを求められる異色の存在だと、傍らから見て感じています。その上でスタートアップ側からは、当社の可能性に共感してくれた心強い味方だと考えています。

Q.VCに求めることは?

A.起業家のバックグラウンドとVCの指向性の掛け算で求めることが変わってくるとは思いますが、特にうちのような研究者による技術系スタートアップの場合、「リードVC」と呼ばれるタイプには会社を成長させる積極的な関与があるとありがたいです。技術者・研究者系の創業者は、大学では何学部の友人が多かったか、どんな知識背景の人と話し易いかなどで、複合的にビジネス系の方々と接点が薄い状況が発生しがちです。それがスタートアップになると、事業系の人を集めることに難儀し、技術は良くても事業モデルの構築が遅れて収益化が見えない、ということになりがちです。ここを突破できる関与が大変ありがたいです。

 

<インテグリカルチャーHP>                                                                                 https://integriculture.com/

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